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【本】 IMF  (ポール・ブルースタイン著 楽工社)

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1997年、アジアの通貨危機と呼ばれる事態が発生した。詳しくは本書に譲るが、順調に発展を続けてきたタイで通貨危機が発生、これが東南アジア全域、韓国にも飛び火したのだ。通貨危機、とはその国の通貨価値が対ドル(基軸通貨あるいは通貨バスケット)で大幅に下落し、ドル建て債務を返済することができなくなることをいう。債務の支払いには、保有している外貨(ドル)準備金、そしてドルを買うための当該国通貨が充当されるが、通貨下落によりドルを買うのに必要なコストが膨大になる。つまり通貨危機とは即ち、手持ちのドルがなくなり、ドルを買うために通貨を大量に発行しなければならない事態、つまりインフレと高金利に直結する事態を意味する。
大学院時代の2002年、山澤逸平先生の国際経済学講義でアジア通貨危機について学んで以降、この事件に興味を持ち続けていた。アジア通貨危機に関するほとんどの本では、危機の発生は投機的な短期資金が通貨先安を見越した瞬間に引き上げたのが要因とされている。しかし、これではあまり説明になっていないと思っていた。なぜなら、通貨先安はどのように見越されるのか、だれが見越すのか、引き上げるとはどういうことか、またこの3要素が発生する順番がはっきりしないからである。また、危機がどのように鎮火したか、についても大抵記されない。本書では、通貨危機に処してきたIMFの救済プログラム策定をめぐる舞台裏ならびに危機にとらわれた各国との交渉の経緯が書かれている。
日本もそうであったが、途上国が経済を発展させる際には、資本不足に必ず直面する。よって、必ず一度は海外からの資本の受け入れの段階を経ることになる。海外からの借金は、銀行を通じて国内企業に融資され、設備など投資を通じて生産活動を拡大し、輸出により外貨を獲得し、その外貨で借金の返済が行なわれる。開発期は一般に通貨が安いため、輸出に有利である。また、経済活動が活発化すると国内の貨幣流通量が増大するためインフレ圧力が生じる。インフレを抑えるため金利が上昇する。国は発展を続けても十分な外貨準備を蓄積するには時間がかかる。よって、外貨準備とともに借款が増えていくのだ。ところで、金利の上昇は、投機的な資金を誘惑してやまない。多くの開発国では、海外からの直接投資受入れを厳しく制限し、厳に投資にヒモつく資金に限り受け入れを行ってきた。しかし、「これは投資資金」という判断は、究極的には不完全なものとなるし、そのような制限を設け手堅くふるまうよりも、さしだされた資金を活用したほうが、はるかに経済発展の速度は上がる。このようにして、「資本投資」の資金と投機的な資金との境はあいまいになる。投機的な資金は、国内外の金利による儲け(日本の安い金利で調達した資金を海外市場で運用するイメージ)、通貨上昇によるリターン(ドル保有者が、1ドル100円で円を買い、その後80円まで円高が進んだ時点でドルに両替すると単純計算で1.25ドルの手取りとなる。)を狙う。なにしろ成長期だから資金ニーズはあちこちにある。貸し手の思惑はそれとして、発展期の借り手は金利以上のリターンを出せる状態(経常黒字)にあるからどんどん借り進める。ところで、リスクの高い借金は、期間が短いのが一般である。返済をすれば新たな借り換えができるから、特に支障はなく感じられる。しかし、あるとき、突如借り換えができない事態が発生する。1つの借り入れの返済が行き詰れば、ほかの貸し手もまたぞろリスク回避の行動をとる。つまり、通貨危機は資金が流出するのではなく、借換えができない事態がその本質と思うのだ。
なぜ、このように長々と書いてきたかといえば、開発国を見舞う金融危機はまるでベンチャー企業の財務そのもので、危機に現れるIMFは「特殊なファンド」にそっくりであるからだ。つまり、マクロな話がミクロでも見られるわけで、ここに大きな興味をそそられたのである。資金の出し手は、相手方の資金が満ち足りているときは、何の交渉力も持たない。借入よりも資金コストが高く、経営権を薄めるエクイティファイナンスは何ら関心を持たれないのが通常だ。しかし、ひとたび企業側の資金繰りのリズムが狂い、借入でつなげなくなると、エクイティの出番だ。その時、ファンドは、ありとあらゆる要求を出す。パニックをあおり、相手の思考能力を奪い、要求をのませる。以前に紹介した「ショックドクトリン」さながらのアプローチなのである。IMFは国際通貨の安定を目論んで設立されたが、決してATMのような物言わぬ資金の出し手ではない。優秀なはずのスタッフにより構成されたこの組織は、政治的であるが非常にナイーブな組織である。専務理事は代々欧州から選出されるのに、実際には議会からの承認をえられそうもない米国の金融支援を肩代わりをしているというねじれ具合がその典型だ。支援のプログラムが効果ないと分かると、世間から大きな失望をうける。しかし、IMFはその設立の理念から、常に事態をコントロールできるようふるまうことが要求される。そのプレッシャーが時に珍妙な要求となってあらわれるのだ。「ショックドクトリン」「ブーメラン」「IMF」は、国際通貨危機の生成とその対処を別々の視点から描いているが、興味ある方は3点セットで読むとよい。

上記の「特殊なファンド」についてはいつか述べたい。

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